坂口安吾
底本:「坂口安吾全集 05」筑摩書房
1998(平成10)年6月20日初版第1刷発行
底本の親本:「婦人文庫 第二巻第七号」
1947(昭和22)年7月1日発行
初出:「婦人文庫 第二巻第七号」
1947(昭和22)年7月1日発行
入力:tatsuki
校正:oterudon
坂口安吾
人はなんでも平和を愛せばいゝと思ふなら大間違ひ、平和、平静、平安、私は然し、そんなものは好きではない。不安、苦しみ、悲しみ、さういふものゝ方が私は好きだ。
私は逆説を弄してゐるわけではない。人生の不幸、悲しみ、苦しみといふものは厭悪、厭離すべきものときめこんで疑ることも知らぬ魂の方が不可解だ。悲しみ、苦しみは人生の花だ。悲しみ苦しみを逆に花さかせ、たのしむことの発見、これをあるひは近代の発見と称してもよろしいかも知れぬ。
恋愛といふと得恋、メデタシ/\と考へて、なんでもさうでなければならないものだときめてゐるが、失恋などゝいふものも大いに趣味のあるもので、第一、得恋メデタシ/\よりも、よつぽど退屈しない。ほんとだ。